退職すると銀行支店長がやってくる

退職すると銀行支店長がやってくる

サラリーマンが、1000万円を超える金額を手にすることはそうそうありません。

30代・40代の平均貯金額は200万を切るレベルですから、それも当然です。

それが30年以上にわたるサラリーマン人生の最後に、2000万円を超える退職金(大卒平均)を手にするのです。これを運用して老後の生活に充てろと言われても、大多数が戸惑うのです。

そこにやってくるのが、銀行の支店長。

支店長は、退職金の話など口が裂けても切り出しません。

現役時代の海外駐在経験やプロジェクトなどの自慢話を、「それはご苦労されたでしょう」と持ち上げてくれるのです。定年後は話し相手もいなかったわけですから、すっかりほだされてしまいます。

そして後日、今度は若い営業マンを同行させ機を見計らって「退職金専用プラン」を持ちかける…

今回はそんな銀行が用意してくる退職金運用プランの真相やおすすめの運用方法についてまとめていきます。

銀行が用意する退職金専用プランとは

銀行が用意する退職金専用プランとは

ではまず銀行が用意する退職金運用プランについて掘り下げていきましょう。

なぜ退職者専用の円預金は利回りが良いのか

どこの銀行もそうですが、退職金専用プランのフック商品が、年6%にも達する円預金です(ちなみにフックは「引っ掛ける」という意味で、メインの商品を売り込むための客寄せパンダのような存在です)。

この超低金利時代に、年6%はいかにも魅力的ですが、これにはカラクリがあります。

まず預金の預入期間は3か月、しかも1回限り。

仮に1000万円預けたとして利息は15万円、決して少ない金額ではありませんが、数10年続く老後の資金としては心もとないと言わざるを得ません。

もう1つのカラクリは、投資信託への加入です。

例えば1000万円預金の交換条件として、1000万円の投資信託に加入しなければなりません。

銀行が薦める、いわゆるアクティブ投信の手数料は平均で3.21%、1000万円の信託に加入すると手数料だけで32.1万円と、円預金による利息15万円を軽く超えてしまいます。

金融庁が全否定!ラップファンドの中身

退職者に人気で、既に預かり残高が8兆円を超えたラップファンドにも要注意です。

ラップとは英語で「包む」「くるむ」という意味で、ラップファンドとは運用と手数料が預かり資産丸ごと一体化される運用商品です。

つまり顧客は一定の手数料を毎年支払い、大まかの投資方針(バランス型・リスク志向型・安全志向型)を決め、後は預け放しで個別の運用商品の入れ替えなどは運用会社に任せておける、そんなお気楽なところが投資初心者の人気を集めているようです。

何度も投資信託を買い替えれば、顧客は手数料の負担がかさみます。

銀行・証券会社を監督・指導する金融庁が、回転売買営業(信託を買い替えさせて販売手数料を稼ぐ)に対する注意・指導を繰り返していたこともあり、金融庁への答えとして開発されたのがラップファンド。

一旦契約を結べば買い替えることのないラップファンド、確かに販売手数料はかさみません。

その替わり、年間1.5%もの手数料がかかります。

その他、購入した運用資産(国内外REIT・株式・債券の投信など)に対して運用管理手数料が加算され、合計で年間手数料は平均で2.2%に達します。

ラップファンドに対しては金融庁も厳しい目を向けており、「金融レポート」でも運用コストの高さを批判しています。

それでも運用成績が高ければ別ですが、運用資産の組み入れプロセスも不透明さが漂います。

「金融レポート」でも、運用会社の多くが証券会社等の子会社となっており、組み入れに当たって親会社の意向を無視できない(系列の投信等を組み入れる)点を批判しています。

運用に無知な退職者をカモる

多くのサラリーマンは、平均で2千万円を超える退職金が入ることはわかっていても、その先どう運用するかまでは考えていません。

そこにつけいるのが銀行で、運用に無知な定年退職者は絶好のカモです。

実際、退職金して初めて投資信託を始めた人の多くが、退職金運用プランの優遇金利に惹かれたこと、金融機関担当者から助言を受けたことを動機に挙げています。

しかし、退職金運用プラン契約者の半数が不満を感じており、「もっと運用に関する知識を身に付けておくべきだった」「少額でも現役中に投資を始めておくべきだった」と後悔しています。

投資は自分で勉強しないで、すべて人任せにしておいて儲かるほど甘い世界ではないのです。

退職金による資産運用の基本

退職金による資産運用の基本

ここで、退職金で資産運用を始めるにあたっての基本的な心得を紹介します。

元本保証に頼りすぎない・投機に走らない

「株や投資信託は値下がりリスクが心配だから、全てを元本保証商品で運用しよう」

みなさんはどう思いますか?

例えば銀行預金なら元本は保証されますが、金利はキャンペーン商品でもない限り0.02%といったところ。

2000万円を預けても1年間で4000円前後、これでは資産が増えません。

かといって、FXやデイトレードなどの投機もおすすめしません。

投機は、ゼロサムゲーム。よくテレビのワイドショーなどで「主婦がFXで月収1000万円」といった特集を見かけますが、裏を返せば1000万円損している人がいるわけです。

株・投資信託などの投資は、投資先の企業が成長し企業価値を上げることができれば、投資家全員がリターンを享受できます。

もちろん、損を出すリスクもありますが、運用リスクとコストをコントロールできればリターンを出しつづけることは十分可能です。

運用コストを気にしよう

株式投資なら取引価格、投資信託なら基準価格といったように、投資家はだれしも自分が投資した銘柄の価格動向を気にします。

次に注意が向くのは、配当や分配金などのキャッシュバックです。

運用コストはどうでしょうか、ついつい見落としがちではないでしょうか?

株式や投資信託を売買する時には、手数料がかかります。さらに投資信託などは、保有している間にも手数料(信託報酬)を払わなければなりません。

海外銘柄に投資すれば、さらに為替スプレッド(外貨購入と売却の手数料)、送金手数料・口座開設手数料もかかりますね。

その他、信用取引・商品取引にも独特の取引があります。

手数料は合計で10-20%に達することもあり、リターンはプラスなのに手数料を差し引いたネットではマイナスというケースも少なくありません。

しかも、こうした手数料は直接支払うだけでなく、預かり資産残高や売却代金から差し引くパターンが多く、契約者が把握し辛くなっています。

経験を磨き・主体的な判断にこだわる

投資の世界は奥が深く、相場に影響を与える経済全体の動向・金利や為替・企業の業績等の基礎的条件(ファンダメンタルズ)と投資家の思惑による需給条件(テクニカル)は常に変化します。

初心者のうちは、失敗が多いのも確かです。

例えば株式投資では、どうしても注目を浴びている銘柄に手を出して損を出す、逆に値が下がった株を売ったらそこから反転したなんてことが起こりがちです。

「失敗は成功の母」。

経験を積み上げながら学び、腕を磨いていくのが投資の醍醐味です。

忘れてはいけないのは、金融機関などの担当者はあくまでアドバイザーです。

助言は聞いてもいいですが、あくまで決定者は自分自身です。言いなりになって損を出しても、担当者は補填してくれません。

そもそも投資信託のメリットとは

退職金による資産運用の基本

では銀行の退職金運用プランに組み入れられている投資信託とは、どんな金融商品でしょうか。

株式投信・公社債投信の残高は100兆円を超えているわけですから、それなりのニーズなりメリットがあるはずです。

少額からの投資や積立が可能

投信の魅力の1つは、少額からの投資が可能な点です。

株式投資の場合、最近は殆どの銘柄で単元株(最低購入単位)が1000株から100株に引き下げられたこともあり、昔よりは買いやすくなりました。

それでも、例えば任天堂の場合、1株当たり価格は約4万円ですから、単元株購入には4万円×100株=400万円の資金が必要です。

投資初心者にとっては、躊躇してしまう金額ですね。

ましてや、複数の銘柄でポートフォリオを組み分散投資を図るなど、よほどの資金がないと不可能です。

投資信託の場合、銀行・証券会社によって異なりますが、一番ハードルの高いメガバンクでも、1万円から受け付けています。積立の場合、月々1000円からでも可能です。

リスクを分散できる

本気でリスク分散しようと思っても、並みの個人投資家ではとても太刀打ちできません。

株式・債券・REITをエリア別(国内・北米・新興国)などにバラけさせ、かつ同じ国内株式でもボラティリティ・価格動向の異なる複数の銘柄を組み合わせ、ポートフォリオの完成です。

しかもポートフォリオはいったん決めたらそれで終わりではなく、状況に応じて組み替えます。

億を超える資金はもちろん、銘柄選定・組み替えの分析にも膨大な時間がかかります。

リスク分散のプロセスを、プロのファンドマネージャーが代行してくれるのが投資信託です。

しかも比較的小粒の投信でも資産残高は1000億円に達するので、思いのままにポートフォリオを組めるのです。

投資の初心者に向いている

初心者にとって、株式投資はハードルの高い存在です。

東証1部に絞っても33業種(食料品・電機機器・海運などなど)にわかれた2100社の中から、これらの銘柄を選ぶのですから。

WEB・経済誌・財テク系雑誌などで情報を集め
→仮説を立てて銘柄を絞り込む
→実際に投資
→結果を検証する

トライアンドエラーの繰り返しで徐々に相場観を養うのですが、最初は失敗もおおいでしょう。

投資信託は、そうした難しい運用をすべてファンドマネージャーが代行してくれます。

つまり、プロの投資テクニックを「買う」訳ですから、投資初心者にとっては心強い存在です。

手数料が高いわりにリターンが低い投資信託

退職金による資産運用の基本

投信のメリットを聞くと良いことずくめのようですが、気になる点がいくつかあります。運用コストと、一番大切なリターンそのものです。

アクティブ投信に偏る日本の投資信託

投資信託は、大きく分けてインデックス投信とアクティブ投信の2種類があります。

インデックス投信とは、ダウ平均・日経平均といった指数(インデックス)に連動する投信で、例えば日経平均インデックス投信は、日経平均とほぼ同じ値動きをするよう225種銘柄を組み入れています。

組み入れ比率は自動的に計算され、ファンドマネージャーの意思は介在しません。

一方でアクティブファンドは、ファンドマネージャーが運用方針(投資セクター・成長ORバリュー重視・中小型OR大型等)を定めたうえでポートフォリオを組成、ベンチマーク(日経平均指数)を上回るリターンを目指します。

運用残高上位20銘柄でみると、アメリカがアクティブ・インデックス半々なのに対し、日本は100%がアクティブです。

アメリカに比べて極端に高い手数料

偏りが出るのは金融機関がにアクティブ投信を推奨するからで、金融庁もこうした「手数料稼ぎ」の営業姿勢を厳しく批判しています。

さらに投信手数料の日米比較をレポート、日本の手数料がアメリカの5倍以上(販売手数料0.59%VS3.21%、信託報酬年率0.28%VS1.53%)という実態を公開しました。

インデックスの信託報酬が年率0.2%以下なのに対し、アクティブ投信は殆どが1.5%以上です。

つまり、偏りが出るのは金融機関が「手数料稼ぎ」のためにアクティブ投信を推奨するからです。

プロが運用するアクティブ投信は本当におすすめ?

コストが割高でも、しっかりリターンが取れれば文句を言う筋合いはないでしょう。

銀行や証券会社も「手数料は確かに高いですがその分投資のプロが運用するので高いパフォーマンスが期待できます」といったセールストークを使います。

しかし、プロの目利きが必ずしも正しいとは限らないのです。

多くの投信がベンチマークとしている日経225ETFは、ここ10年で年率2.76%(0.22%の信託報酬控除後)のリターンを上げています。

一方で、信託報酬が1.5%以上のアクティブファンドの場合、リターンは平均1.27%です。しかも141本ある投信のうち実に53本(約4割)が損失を叩き出しています。

つまり、アクティブを買うより、ETFで運用していた方が倍以上のリターンを稼げたことになります。

投資のプロがいかにあてにならないかがわかりますね。

顧客軽視の投信商品を生む運用会社

退職金による資産運用の基本

どうも日本の投信は、割高なコストとさえないリターンが、投信ならではのメリットを相殺しているようです。

なぜこんなことに、なってしまったのでしょうか。

「長期・分散・低コスト」でアメリカ人に投資を定着させたバンガード

今年1月「インデックス・ファンドの父」と呼ばれるジョン・ボーグル氏(投信会社バンガード創業者)が亡くなりました。

半世紀前のアメリカ人はまだまだ貯蓄中心で、投信もアクティブファンドが圧倒的優位を占めていた時代です。

そんな時代にボーグル氏は信託報酬を低く抑え、販売手数料をゼロとした革命的な商品「S&P500インデックス・ファンド」を発売。

当時は業界人からも「ばかげた行為」と笑われましたが、その後インデックスファンドは投資家の間に急速に普及します。

インデックスファンドは、アメリカ人に投資カルチャーを定着させました。

ここ20年でアメリカは運用で家計資産を2.32倍に増やしています(日本は1.15倍)。「資産倍増効果」にボーグル氏は多大なる貢献を果たしたというわけです。

投信運用会社は証券・銀行の出向先

一方で日本では、顧客本位の投信運用といった観点から考えるとまだまだ課題が多いようです。

日米の投信運用会社を比較すると、上位5社によるシェアはアメリカが4割に対し、日本は7割に達しています。

さらにアメリカは独立系が中心(銀行・証券系はJPモルガンのみ)なのに対し、日本は大手証券とメガバンクが独占しています。

つまり日本の信託運用会社は寡占状況の中で競争があまり働かず、さらに顧客ではなく親会社である銀行・証券の利益を優先しがちです。

販売サイドのニーズで作られる投信商品

1銘柄当たりの純資産残高で、日本は159億円とアメリカの1/10以下、日米仏英独5ヵ国でも最低です。

テーマ型投信という金融商品をご存知でしょうか。

これは顧客の注目を集めやすいテーマ(少し前なら新興国、今ならロボット・AIなど)をコンセプトとした投資信託です。

テーマ型投信は、手数料が稼ぎたい銀行・証券の営業ニーズが高く、運用会社は商品を開発せざるを得ません。

その結果商品が乱立し、投信の小粒化・短命化を招いています。

本気で投信を日本で定着させたいのなら、こうした現状を見直し、投信期間の長期化と銘柄当たりの規模拡大を目指すべきでしょう。

投信とヘッジファンドの違い

退職金による資産運用の基本

では、投資信託以外に資産運用手段は無いのでしょうか。ここでは選択肢の1つとしてヘッジファンドを紹介します。

ヘッジファンドは投資信託とここが違う

両者の違いで大きいのは、まず報酬制度です。投資信託の場合は、運用で損が出たとしても手数料がかかります。

一方ヘッジファンドは成果報酬制(概ねリターンの2割)を採用しています。

さらにヘッジファンドはリミテッド・パートナーシップ制に基づき、経営者自らも出資しています。だからこそ、リターンを上げるインセンティブが働くのです。

もう一つの違いは、運用ポリシーです。ヘッジファンドの運用は絶対収益をめざしており、相場が落ちてもリターンが期待できるのです。

例えばバフェットの再来といわれるケネス・グリフィン氏が率いる米ヘッジファンドのシタデルは、2017年は17%、2018年も9%と高いリターンを叩き出しました。

まとめ

いかがだったでしょうか?

結論から言いますと、退職をした後に話をしてくる銀行支店長の話は極力聞かないことに限ります。

ただ一方で自分で資産運用していく知識をつけていかなければならないのも事実ですが、今回紹介したヘッジファンドなどで預けてみるというのもある意味安全で確実だともいえます。

特にアメリカや欧米各国ではヘッジファンドの認知度は広く、一般の投資家でもまとまった資産の運用はヘッジファンドに運用してもらっている実態があります。

もし退職金の運用で迷ったら、ヘッジファンドに相談してみるというのも良い選択になるかもしれませんね。

>>国内のおすすめヘッジファンドや基本的な仕組みはこちら