1億円のリターンが50億円に!

1億円のリターンが50億円に!

ヘッジファンドと聞くと、レバレッジを駆使して投機的な取引を繰り返し巨額の利益をむしり取るといったイメージが染みついています。

ヘッジファンドを忌み嫌う政治家も少なくありません。

ゴードン・ブラウン英元首相はエリオットマネジメントに関し「倫理的に許しがたい」と発言、マレーシアのマハティール首相はジョージ・ソロス氏を「暴利をむさぼる恥知らず」と名指しで批判されています。

果ては、ポール・シンガー率いるエリオット・マネジメントによる名門サッカーチーム・ACミランの買収も、フットボールファンの間で物議を醸す始末です。

では、レバレッジは単なる投機的な手法に過ぎないのでしょうか?
果たしてヘッジファンドはただの暴利をむさぼる集団なのでしょうか?

今回の記事では、レバレッジとヘッジファンドの実像に迫ってみます。

そもそもヘッジファンドとは何か

そもそもヘッジファンドとは何か

まずはそもそもヘッジファンドとは何かについてみていきましょう。

ヘッジファンドの真骨頂は経済危機時の損失回避

ヘッジファンドといえば、絶えず市場平均よりも高いリターンを稼ぎ出しているイメージを持たれがちですが、常に好成績というわけではなさそうです。

株式とヘッジファンドの長期リターンを比較すると、株式が経済動向や金融情勢、更には地政学的影響を受けて上下動を激しく繰り返すのに対し、ヘッジファンドは安定的に収益を伸ばしています。

さすがにリーマンショック時は落ち込んでいますが、その下落は株式相場よりもはるかに小幅にとどまっています。

逆に最近5年間のようにダウ平均が5割も上昇した相場環境では、ヘッジファンドのパフォーマンスは目立ちません。

ヘッジファンドはその強欲なイメージに反し、常に安定的な収益を稼ぎ出しているようです。

とくにヘッジファンドは、ITバブル崩壊やリーマンショックなどの経済危機時に真骨頂を発揮しています。

なぜそんなことが可能なのかといえば、ヘッジファンドが目指すのはあくまで「絶対収益」だからです。

ヘッジファンドが目指す絶対収益とは

もともと英国では、庭園・田畑を暴風などから守る仕切りに使う生け垣・垣根のことを、ヘッジ(hedge)と呼んできました。

そこから派生して、投資の世界ではリスク(株価の下落・経済危機など)をあらかじめ想定して対応策を講じることをヘッジと呼ぶようになりました。

ヘッジファンドに厳密な定義はありませんが、一般的にはさまざまなヘッジ手法を駆使して「絶対収益」を目指すファンドとされています。

いわゆる公募投資信託は、日経平均株価等のベンチマークを長期的に上回るリターンを目指しポートフォリオを組成します。

公募投信が目指すのはあくまで「相対収益」であり、ベンチマークが落ち込めば、リターンの悪化もやむを得ないという考え方です。

一方で、ヘッジファンドが目指すのは相場の変動にかかわりなく安定的なリターンを確保する「絶対収益」です。

絶対収益を支える4つの柱

ヘッジファンドの絶対収益は、4つの柱に支えられています。

成果報酬制
投資信託の手数料(信託報酬)は、リターンの多寡にかかわらず、信託財産残高に応じ年1.5%~2%かかります。

一方でヘッジファンドの場合は、メインとなる手数料は、リターンの20%前後とされる成果報酬です。

ファンドマネージャー自らの成果報酬も比例的に増えるわけですから、高いリターン獲得に強いインセンティブが働くのです。

パートナーシップ制
ヘッジファンドの多くはリミテッドパートナーシップ制を採り、ジェネラル・パートナーが運用に関して強い裁量権を握ります。

同時に、ジェネラル・パートナーは自らも多額の資金を出資します。パートナーシップ制は成果報酬制とのミックスで、ファンドのモチベーションを支えているのです。

ショートポジション
アービトラージ・マルチ戦略・オプション取引など現在ではさまざまなヘッジ手法を駆使するヘッジファンドですが、その原点はショートポジションです。

値下がりしそうな銘柄を空売りして相場下落時にも利益を確保するオーソドックスなディールですが、ショートポジションは今でも健在です。

例えば今年3月の米S&P指数は振るわず0.6%の上昇でしたが、ロング・ショート戦略を得意とするヘッジファンドは同月に2%のリターンを叩き出しています。

銘柄選択とネットポジションの巧みさが結果的に好成績につながったと、業界では評価されています。

レバレッジ
ヘッジファンドは絶対収益を目指すために、ショートポジションなどのヘッジをかけます。

それでも相場が調子よく上がり続ければ、ヘッジをかけた分は損失が発生します。これが「ヘッジコスト」です。

絶対収益の魅力は相場下落時も安定的な収益を稼げる点ですが、裏を返せば相場上昇時にはヘッジコストを抱えた分だけ収益は見劣りします。

この見劣りする収益を増幅する手段として、活用されるのがレバレッジです。

大きな利益が見込める「レバレッジ(てこの原理)」とは

大きな利益が見込める「レバレッジ(てこの原理)」とは

それでは続いて、ヘッジファンドが最大収益を目指すにあたって必要不可欠な「レバレッジ」について見ていきましょう。

少ない資金で大きな投資ができる

レバレッジと聞くと、投機的な取引で駆使される特殊な手法のようなイメージですが、実は私たちも身近に使っています。それは、住宅ローンです。

例えば5000万円の物件を1割の掛け目(自己資金500万円)で住宅ローンを組んだとすれば、これは10倍のレバレッジをかけたことになります。

つまり、少ない資金で大きな投資ができるのがレバレッジです。

例えば自己資金100万円をもとでに50倍のレバレッジなら、5000万円まで相場を張れます。仮に相場が1%上昇すりだけでリターンは5000万円×1%=50万円、収益率は50万円÷100万円=50%に達します。

逆に2%値下がりすると、5000万円×▲2%=▲100万円で自己資金が吹っ飛びます。

このようにレバレッジは、ハイリスク・ハイリターンの取引なのです。

レバレッジと信用取引

レバレッジは、何も新しい手法ではありません。

江戸時代には米の先物取引が盛んにおこなわれ、その流れは明治以降に整備された11の株式取引所にも受け継がれます。

戦後GHQは先物取引を禁止、替わりにアメリカ式の信用取引制度が導入されます。ちょうど朝鮮動乱による好景気もあり、個人投資家の資金が信用制度を通じて流れ込み、株式市場は一挙に活性化します。

信用取引制度は市場活性化、ひいては日本の復興に一役買ったわけです。

その後は機関投資家の増加もあり、信用取引の利用率は低下傾向にありました。ところが最近、ネット取引の定着と期を同じくして、信用取引を利用する個人投資家が増えています。

もしかしたらこのトレンドが、長いこと沈滞し続けた日本の株式市場に火をつけるかもしれません。

信用取引を支える仕組み

信用取引制度のもと投資家は、たとえ自己資金が不足していても証券会社から資金や株券を借り、株を売ったり買ったりすることができます。

委託保証金とは
ただし投資家は信用売買に当たって一定の資金(ないしは担保としての株券)を証券会社(または証券金融会社)に現金または株券を差し入れなければいけません。これを、委託保証金と呼びます。

代用有価証券
差し入れる株券のことを代用有価証券と呼び、掛目は通常8割とされています。

委託保証金率とてこの原理
1000万円の株を信用取引で売買する場合、差し入れる現金は1000万円×30%=300万円です。

仮に株価が3%上昇すれば1000万円×3%=30万円、収益率は30万円/300万円=10%に増幅します。これがレバレッジ効果(てこの原理)です。

株価が下がったら追証
信用取引売買後に株価が下がった場合(信用売の場合は上がった場合)には、追加保証金(追証)を差し入れなければいけません。追証が払えないと、取引は自動的に決済されてしまいます。

決済に当たって、保証金以上に株価が下がっていたら、その差額は証券会社への借金です。

レバレッジのリスクコントロール

レバレッジのリスクコントロール

レバレッジは少ない資金でリターンを増幅できる一方で、裏目に出た場合には借金さえ背負いかねないリスクを負います。

とくに投資銀行やヘッジファンドには、個人投資家も参加する信用取引の委託保証金率とは一桁違うレバレッジ比率が認められています。

収益を上げているヘッジファンドは、こうしたハイリスクの環境下で適切にかじ取りする手腕に長けているのです。

ヘッジファンド=高レバレッジは偏見

「ヘッジファンドは30倍40倍の高レバレッジ率でリスクの高い取引を繰り返している」世間では、ステレオタイプのイメージを抱かれがちですが本当でしょうか?

こんな先入観を持たれるようになったのは、20年ほど前に起きたヘッジファンドの破綻がきっかけです。

ソロモンブラザースでバイス・チェアマンまで昇りつめたジョン・メリウェザーが「ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)」を立ち上げたのは1994年です。

彼女はノーベル経済学賞受賞のトレーダーらを招へいして「ドリームチーム」を編成、高度な金融工学を駆使した運用で驚異的なリターンを4期連続でたたき出し続けました。

LTCMによる高収益のエンジンは、高いレバレッジです。彼らが得意とするアノマリー(価格の歪み)は収益率が2.5%程度でしたが、これに20倍近いレバレッジをかけ、42.8%まで増幅させていました。

リスクは完ぺきにヘッジされており、LTCMの興隆は半永久的に続くはずでした。想定外の事態が起きなければ。

1998年8月、経済危機に陥っていたロシアは、国債の償還不能(デフォルト)を突然発表します。まさに想定外の事態で、高いレバレッジをかけていたLTCMはひとたまりもなく、10月には短い歴史の幕を閉じました。

一方で、平均的なヘッジファンドのレバレッジ比率はおよそ2倍前後だとされています(ナショナル・ビューロー・オブ・エコノミックリサーチのレポートによる)。ヘッジファンド=高レバレッジは、LTCM破綻が生んだ偏見のようです。

高レバレッジで潰れた投資銀行リーマン

LTCMがかけていたレバレッジの資金供給元は、投資銀行です。LTCMの決済・ブローカー業務、レバレッジの融資など、LTCMのおかげでさまざまなビジネスチャンスに恵まれたわけです。

そして最後は、投資銀行が融資を引き揚げたため、LTCMは損を承知でポジションを解消せざるを得ませんでした。そのポジション解消を狙って、銀行は空売りを仕掛けます。銀行はLTCMを、いいように利用していたわけです。

そしてLTCM事件からおよそ10年後、今度は投資銀行リーマン・ブラザースが破綻、世に言うリーマンショックの始まりです。当時の投資銀行は40倍に達するレバレッジをかけてトレード、我が世の春を謳歌してきましたが、サブプライムショックをきっかけに苦境に陥ります。

ソロモンとリーマンは破綻、メリル・リンチはバンクオブアメリカに買収され、米5大投資銀行で残ったのはゴールドマンサックスとモルガン・スタンレーの2行だけです。

ボラティリティーとお上の規制

「投資銀行のマネーゲームが金融危機を招いた」との反省から、バーゼル委員会主導のもと、リーマンショック後に様々な金融規制が導入されました。

柱の1つがレバレッジ規制で、オフバランス項目も含めたレバレッジ比率は3%以上に制限されたのです。

一方で個人投資家も参加する信用取引には、より厳しい規制が課されています。

通常、委託保証金率は30%に規制されていますが、特定銘柄の相場が過熱すると規制当局によって率が引き上げられます。さらに代用有価証券の差し入れを認めないことも起こりえ舞うこれを増担保規制と呼びます。

東証は特定銘柄が過熱気味になってきてもいきなり増担保規制をかけるのではなく、まず「日々公表銘柄」に指定します。その上で信用売買比率・信用取引残高・売買回転率・上場銘柄を日々モニタリング、基準を上回るようであれば今度は増担保規制をかけます。

こうしたレバレッジ規制によって、株式相場の過熱が抑えられ、安定した取引が実現するのです。

投信とヘッジファンドの違い

投信とヘッジファンドの違い

それではここまで紹介してきましたヘッジファンドと似てる金融商品である投資信託の違いについても触れていきましょう。

敷居の高い欧米ヘッジファンド

レバレッジやショートポジションを駆使して「絶対収益」をめざすヘッジファンドへの出資者は、いわゆる超富裕層だけではありません。

総資産26兆円を誇るカリフォルニア州職員退職年金基金(通称カルパース)をはじめとする年金基金も、株式運用等によるボラティリティーをヘッジするため、最近はヘッジファンドの組み入れ比率を引き上げています。

では、私たちのような個人投資家に門は開かれているのでしょうか。

残念ながら、名門ヘッジファンドの多くは超のつくお金持ちしか相手にしません。世界屈指のファンドとして知られるブラックストーンも、出資金額は最低でも5億円とされています。

その上、ファンドマネージャーとのやりとりは英語が基本です。国内外資系銀行のプライベート窓口でも取り次いでくれますが、いざというときには自らアメリカに乗り込んで現地と交渉する、日常も電話ミーティングで状況を把握しておく、といったリテラシーは欠かせません。でないと、相手になめられるだけです。

育ちつつある国内勢

一方で、国内でもファンドは育ちつつあります。

国内ヘッジファンドの場合、最低出資金額が1000万円前後と資金面でのハードルが低いのも嬉しい魅力です。それだけではなく、日本語でのコミュニケーションが可能な点も大きな魅力です。

国内でファンド業を営んでいるのは400社強、株・債券だけでなく通貨・コモディティから不動産までカバーしています。国内大手金融機関系列や外資系投資銀行の日本法人系が幅を利かせていますが、最近では独立系が注目を集めています。

日本のヘッジファンド3選紹介

最後に、日本のヘッジファンドを3つご紹介します。

BMキャピタル

BMの投資先は主に国内株式、とくにバリュー株の運用には定評があります。同時に、発行体に対する「物言う株主」としての要請(株主還元や経営提言)も躊躇しないフットワークの良さも魅力の一つです。

こうしたパフォーマンスのバックボーンとなっているのが、株式市場やファイナンスに対する高い分析力です。アナリストには投資銀行経験者など、選りすぐりの人材を集めています。

運用面・分析面でのパフォーマンスの高さは数字にも表れており、毎年の収益率は10%以上に達します。

見逃しやすい点ですが、最も好感が持てるのが「出資者と共に成長する」スタンスです。わかりやすい「運用レポート」等を通じて出資者は常に運用状況を把握でき、同時に投資のスキルも磨けるのです。

>>BMキャピタルの詳細はこちら

アズカルアセットマネジメント

アズカルアセットマネジメント

代表の稲葉真行は野村アセットマネジメントで国内外株式運用の経験を積み、2005年にアズカルを共同で立ち上げました。共同経営者には投資会社のトレーディング部長・ファンドマネージャー経験者、異色なところではキューサイ(「まずい、もう一杯」のCMで有名な青汁の会社)の代表取締役といった顔ぶれをそろえています。

国内株式運用を得意とするだけではなく、やはりヘッジファンドの名に恥じず株価の下落局面でもリターンを確保します。基本的な運用方針は理論価格の徹底的な追求で、卓抜したファンダメンタルズ分析が2014年以来連戦連勝という高いリターンの実現につながっているのです。

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ヘッジファンド証券

ヘッジファンド証券

ヘッジファンド証券は、ヘッジファンドに投資するいわゆる「ファンドオブファンズ」です。投資先はエピック・パートナーズ・インベストメンツ社、代表の武英松氏は日興証券出身で、フェアバリュー分析・投資先や市場との対話・分散運用を重視したファンドです。

運用スタイルは、割安銘柄を買い付けると同時に割高銘柄を売り建てするマーケットニュートラル戦略により、絶えず安定したリターンを追及しています。

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