日本国内のヘッジファンド規制とは?
毎年金融業界に大きなインパクトを与えるヘッジファンド。一体全体彼等の動きには何かしらの規制がかけられているのか気になりますよね。
特に金融庁はヘッジファンドに対してどんな規制を実施しており、その規制は今後強化されるのかどうか、そして他国と比べると日本の規制は緩いのかきついのか。なんてことは気になるかと思います。
そこでこのページでは金融庁がヘッジファンド各社に課している規制にはどんなものがあり、今後規制は強まるのかどうかについて見ていきます。ご一読されるだけで日本と諸外国のヘッジファンド規制の違い、そして国内のヘッジファンド規制の今後の動向がわかります。
目次
日本のヘッジファンド規制の現状
金融庁がヘッジファンド各社に課している規制はいくつもあるのですが、特に覚えておきたいのがこちらの4つです。
2. 帳簿書類の作成・保存の義務
3. 年次報告書の作成・開示義務
4. 日本における代表者の設定
ここで取り上げた4種類の規制の詳細については上らから順番に見ていきます。
原則として公募ができない
この見出しにあるようにヘッジファンド各社は金融商品取引法という法律のために公募が事実上禁止されております。
なぜ公募が規制されているかというと金融商品取引法の中には公募制のファンドの運営ルールが規定されているからです。ちなみに公募が認められる条件はどうなっているかというと、こちらのようになっております。
- リスクの高い運用手法を採用しない
- 安全性が高い商品で運用する
この基準に照らし合わせるとレバレッジという手法を利用したり、変動性の高い商品への投資も行うヘッジファンドは基準の対象外。その結果としてヘッジファンド各社は自ずと公募が規制される結果になってしまうのです。
逆に言えば公募が規制されていないヘッジファンド商品というのは規制の対象にならないように加工された商品だと認識することをおすすめします。
帳簿書類の作成・保存の義務
次に紹介する金融庁が課したヘッジファンド規制は毎年帳簿関係の書類を作成し、常に保存をすることです。当たり前といえば当たり前の規制かも知れませんが、このルールがヘッジファンド業界に導入されたのは実は最近なのです。
それ以前は帳簿の保存等が求められなかったためにヘッジファンド業者の中には税務申告で不正を行う会社が少なくありませんでした。決算不正を行うヘッジファンドを減らすために金融庁は帳簿書類の作成や保存を規制の項目の1つに加えたという経緯があります。
年次報告書の作成・開示義務
3つ目のヘッジファンドに課される規制というのは年始報告書の作成と開示義務です。
実はこの規制は投資家保護のための規制でして、年次報告書の作成や開示をせずに営業行為を行うことを禁止しております。万が一、年次報告書の作成や開示を怠ったうえで営業活動を行ったヘッジファンドは行政指導や営業処分の対象になります。
正確な年次報告書の作成と開示が規制で義務化されて以来、運用状況が全くの未知のヘッジファンドの数は激減しました。
日本における代表者の設定
日本国内で営業活動を行う海外のヘッジファンドは日本国内の代表者を置くことが規制で義務付けられております。この規制が導入しされて以来、日本国内で営業を行う海外のヘッジファンド各社は日本人の代表を置くようになりました。
これは日本に本社を置くヘッジファンドには関係ない話ですが、海外に籍を置くヘッジファンドからするとかなり厳しい規制になります。
日本と諸外国における投資ルールの違い
先ほど取り上げた日本国内のヘッジファンド規制は諸外国と比べると厳しいのか緩いのか気になるかもしれません。そこでここからは日本以外の諸外国のヘッジファンド規制の内容について見てみようと思います。
アメリカ
アメリカ国内にはドットフランク法というヘッジファンド業界を取り締まる法律があります。
実はこのドットフランク法と言うのはリーマンショックの誤りを繰り返さないためにオバマ政権が打ち出した金融規制改革法です。この規制改革法が導入されて以来、アメリカ国内のヘッジファンド業界にはこのようなルールが課されるようになりました。
アメリカにおけるヘッジファンド規制
・デフォルトリスクの計算と報告
・保有資産の種類と投資手法の報告
・利用しているレバレッジの報告
・運用責任者の登録の際の厳格な基準
・毎年の成果報告
・その他
特に日本と異なり、アメリカではファンドマネージャーの登録手続きにもルールが定められています。オバマ政権が実施した規制の厳しさを考えると金融庁が国内のヘッジファンドに課した規制内容は非常に緩いと言わざるを得ません。
欧州
イギリスやフランスをはじめとした欧州各国でもヘッジファンドに対する規制はいくつもあります。具体的な規制基準は各国で多少異なりますが、欧州のヘッジファンドのマネージャーはAIFMDという指令の順守が求められております。
この「AIFMD」というのはオルタナティブ投資ファンドマネージャー指令と呼ばれるものです。その名の通り、ヘッジファンドの責任者が守らなくてはいけない欧州共通のルールが定められております。そんな「AIFMD」の中で規制されている項目はこのようになっております。
欧州におけるヘッジファンド規制
・自己資本規制関係
・年次報告を始めとした各種の報告
・パフォーマンスの適宜開示
・ファンドの登録許可関連
・EU国内におけるマーケティング規制
・EU国外でのマーケティング活動のルール
・社内のコンプライアンス体制の規定
各項目の詳細に関してはここでは割愛しますが、欧州のヘッジファンド規制は情報開示に加えて自己資本比率や社内体制まで規定されております。日本の金融庁が規制の対象に加えてない項目もルール化しているので規制内容は日本国内よりも厳しいです。
シンガポール
現在のアジア金融の中心でもあり、タックスヘブンの1つでもあるシンガポールには数多くのヘッジファンドがあります。そんなヘッジファンド大国であるシンガポールに導入されているヘッジファンド規制の大まかな概要を一覧にしてみました。
シンガポールにおけるヘッジファンド規制
・内部監査関係のルール
・独立監査人の配置
・社内のコンプライアンス体制
・組織としての適格性の診断
・デリバティブの規制
・マネーロンダリングの規制
流石にアジア一の金融大国だけあって規制の対象項目が非常に多いです。各項目の具体的な詳細については長くなるので割愛しますが、シンガポールは規制の対象項目が多いという点は押さえたいですね。
中国
中国国内のヘッジファンド規制は2015年に起きたチャイナショックの影響で2016年に大きく強化されました。そんな背景がある中国国内で現在実施されているヘッジファンド規制の概要はこちらの通りです。
中国におけるヘッジファンド規制
・投機的な行為を行うファンドへの取り締まり
・営業活動を行う際の事前の登録許可申請
・社内に既定の資格保有者の配置
・ファンド責任者への法的な助言の義務付け
各項目の詳細な内容はこちらも割愛いたしますが、ヘッジファンド各社には中国政府が決めたルールの順守が求められます。しかも中国政府はころころと規制の内容を返る以上、常に中国政府が定めた最新のルールに社内体制を合わせることが求められます。
国内の規制は海外並みに強化される
実は日本国内のヘッジファンド規制の水準は海外の基準と照らし合わせるとかなり緩いという結論になります。その理由としてはこちらの通りです。
・運用手法に対する厳しい規制はない
・デリバティブ周りの制限ルールは特にない
・ルールが規定されているのは報告分野ばかり
・自主規制に任されている分野が多い
ここで取り上げた5つの理由の中で特に際立つのが一番下にある「自主規制に任されている分野が多い」ということです。実は日本の金融庁はヘッジファンドに各種の資料の公開や報告を求めますが、自己資本比率等に関しては各社の判断に任せています。
つまり、他の諸外国なら法令で規制する分野が日本国内のルールでは自主規制にとどまっているのです。正直な話、現時点では「自主規制」で大きな問題は起きていませんが、今後何かしらの問題が起きた場合、金融庁が規制内容を強くすることは十分に考えらます。
何を隠そう金融庁は為替相場に大きな影響を与えるヘッジファンド業界を常に警戒しております。そこで現行では他国に比べると基準が緩い日本国内の規制基準は今後海外並みに強化されることは十分に想定されるのです。
強化の意味とおすすめのファンド
規制が強化されると言われるとヘッジファンド投資への意欲がそがれるかもしれません。
ですが、金融庁が課す規制の根本的な目的というのは投資家保護を目的にしているので本来はそんなに悪いものではありません。それに規制が強まってリスクの高い運営方針をしている会社が淘汰されればそれはヘッジファンド業界の健全化に繋がります。
そこで今後国内の規制が強くなったとしても、それはポジティブなものとして捉えることをおすすめします。
なお、最後に規制の話とはずれますが、投資先として利用しておきたいおすすめのヘッジファンドについても最後にご紹介します。
おすすめのファンドランキング
今回ランキング形式で取り上げるヘッジファンドはこちらの3社です。
順位 | ヘッジファンド名 |
---|---|
1位 | BMキャピタル |
2位 | アズカル・アセットマネジメント |
3位 | ヘッジファンド証券 |
ここで取り上げた3社はいずれも年間の期待利回りがファンド業界の標準である15%を超える優秀なヘッジファンドです。そこでもしあなたが利回りの高いおすすめのヘッジファンドをお探しでしたらこの中から探してみることをおすすめします。