
近年、人間の世界にとって脅威の存在となりつつある「AI」。野村総合研究所が発表したデータによると、2025年ごろまでに日本の労働人口の約半数がAIなどで代替することが出来ると予測しています。
そしてこのAIは資産運用業界にも通じるものであり、あるコンサルティング会社は「資産運用業界における従業員30万人のうち9万人が2025年までに職を失う」と発表しています。恐ろしいですよね…。
先日のBloombergの報道でもAIとヘッジファンドの動向が報じられており、ロシアのヘッジファンド会社「ウィントン」がAIを用いてかの有名な投資家ウォーレン・バフェット氏の成績を上回るかを試した動きがあります。
ちなみに結果は、ウィントンが考えていた理論は正当化されずバフェット氏には及びませんでしたが、「事前に損失を被るリスクを回避できた」と前向きに考えています。
このようにAIは運用業界ですでに存在感を示しており、投資銀行「ゴールドマンサックス」や大手ヘッジファンド「ツー・シグマ」などが銘柄分析や運用戦略のツールにAIを既に採用しています。
そしてもちろんヘッジファンド業界もAIには注目しており、英大手ヘッジファンド「マン・グループ」のルーク・エリスCEOも「25年後には投資管理業務の99%が機械学習によって行われる」と話しています。
ただ本当にヘッジファンドなどの運用業務はAIに代替されるのでしょうか?現にヘッジファンド投資を行っている人や今後ヘッジファンド投資を検討している方は特に気になりますよね!
ただ「AIが運用業務を代替する可能性は低い」です。その理由をこれから解説します。
AIは「人間をサポートする」ためのもの
まず初めに多くの人々はAIに対して「誤解」をしています。そもそもAIの存在意義は「人間の業務をサポートするため」であり、「人間の業務を代替する」ことが本来の目的ではありません。
事実、米大手IBMはAIを「Augmented Intelligence」の略語として、「(人間の能力を)拡張する知能」と考えています。
そして運用業界においてもAIは「銘柄の分析」をはじめとした、従来のアナリスト業務をサポートする形で存在していくと見るのが妥当です。従来、銘柄分析にかかっていた時間が削減されることが期待されているというわけです。
AIは説明責任を負うことが出来ない
また何よりもAIに代替され得ない業務は「ヘッジファンドマネージャー」の仕事です。
ヘッジファンドマネージャーは顧客から預かった資産を運用する役割を担っており、利益や損失が出た場合はその原因などを「説明する責任」を負います。
ただこの説明責任をAIが担うことは出来ません。なぜならその場合、顧客に対して説明するのは誰になるのかが分からなくなるからです。
例えばIBMのAI「Watson」を導入したヘッジファンドの成績がマイナスになった場合、説明責任は誰が担うのでしょうか?
ヘッジファンドにセールスしたIBMの社員なのか、AIの導入を決めたヘッジファンドの社員なのか、はたまた運用の中でAIを管理していた従業員なのかが分かりませんよね。つまり責任の所在が曖昧になるわけです。
このような運用会社にお金を預けたくはありませんよね。ヘッジファンドも同様、AIに全ての業務を任せてしまうとマイナスのリターンを記録した場合に被るリスクが大きくなり、AIに全てを任せることは避けています。
なので「AIがヘッジファンドなどの運用業務を代替する可能性は低い」と考えられます。人間にしか負えない責任が運用業界には存在するというわけです。
AIを採用するヘッジファンドは増加
ただそれでもAIファンドは次々と設立されています。ヘッジファンドの代表的指数「ユーリカヘッジ指数」によると、13のAIファンドは2017年10月末までに年平均8.5%のリターンを記録しており、ヘッジファンド業界平均を上回っています。
ちなみにこの数字は、ヘッジファンド業界の平均リターンはたしかに上回っていますが、株式市場全体の上昇率には及んでいません。まだまだAIの運用成績は改善の余地があるというわけですね。
そして2017年2月には100%AIファンドが設立されており、設立者はiphoneで利用できる音声アシスタント「Siri」の基盤づくりに貢献した経験を持っています。
同氏は「AIを活用することでウォール街のプロよりも優位に立てる」と考えており、このヘッジファンドの動向にはさらに注目が集まりますよね。
以上、ヘッジファンドとAIの動向について最新状況を解説しましたが、改めてAIに代替される可能性は低いと考えられます。ただその中でもヘッジファンドがAIを何かしらの形で採用する動きは加速していくことでしょう。
今後の運用成績次第でAIの注目度は大きく変わると思いますので、今後の動向にはぜひとも注目してきたいですね!