プロに任せて運用ができるヘッジファンドと投資信託は何が違う?

銀行による投資信託の窓口販売が開始された1997年。

敷居の高い証券会社店舗に行かなくても購入できるようになり、その後投信の運用残高は順調に増加を続けました。

あれから20年が経過し、NISAやつみたてNISAといった少額投資非課税制度も導入され、1000円といった少額投資も可能になりました。

こうした運用環境の整備が進んだこともあり、資産運用初心者にとっても投資信託は、比較的身近な金融商品として定着しつつあります。

一方のヘッジファンドは、映画やテレビでその名は見聞きするものの、その存在は秘密のベールに包まれているといったところが実感でしょう。

実はこのヘッジファンド、1000万円のまとまった資金があれば投資できるのです。

そこでこの記事では、投資信託とヘッジファンドの違いとして「運用方針」「資金の集め方」「運用手法」などの違いについて解説すると同時に、ヘッジファンドと投資信託のどちらに投資すべきかを解説していきます。

収益目標の違い

投資信託の運用報告書には必ず「ベンチマークの○○%を超えて△△%の運用利回りを確保」といったコメントが記載されています。

ベンチマークとは運用成績を比較するために設定する競合相手のことをいい、投資信託は一般的に日経平均225種や東証株価指数(TOPIX)をベンチマークとし、長期的にこれを上回る運用成績をめざします。

つまり投資信託の収益目標はベンチマークを基準とした相対的な収益で、相場が軟調の時はマイナス収益もあり得ます。

例えばベンチマークのTOPIXが20%落ち込んだら、運用成績がマイナス10%でもベンチマークを上回ったことになりますね。

一方で、ヘッジファンドの収益目標は投資信託と違い、全体的な相場の動きと関係なく常に絶対収益をめざします。

例えばヘッジファンドは収益目標を10%と定めたら、たとえTOPIXや日経平均が落ち込もうと、収益目標はあくまで10%に据え置きます。

そして投資信託とヘッジファンドの収益目標の違いは、おのずと投資手法の違いに直結しますので、次で見ていきましょう。

投資手法の違い

投資信託の運用会社は、投資信託毎にまず運用方針を策定します。

例えば国内グロース小型株カテゴリーの場合「ジャスダック・東証マザーズ市場の小型株より、ROE・年平均成長率(CAGR)に着目して銘柄を選定、長期的リターンをめざす」といいった具合です。

この運用方針のもと、運用会社は組み入れ銘柄をスクリーニングし、ポートフォリオを組成します。

投資信託は通常フルインベストといって、運用資産の目いっぱいに株式などを保有します。つまり、保有によってリターンを狙うのが基本です。

フルインベストの弱点が露呈するのは、相場が大きく下げたとき。

そんな場合には、保有株式銘柄の組成(ポートフォリオ)見直しによりダメージの軽減を図りますが、全面的な回避は困難です。

一方のヘッジファンドは投資信託と違い、投資手法に関する規制は緩いこともあり、レバレッジをフルに効かせて、ヘッジ目的以外のデリバティブも積極的に仕掛けます。

最も古典的かつ今でも主流の手法は、「ロング・ショート戦略」です。ロングポジションと買いポジションを意味し、ショートポジションとは売りポジションを意味します。

つまり将来値上がりが見込めそうな銘柄に買いを入れる(ロング)点は投資信託と違いはありませんが、大きく違うのは割高な銘柄に対して空売りを浴びせる(ショート)点です。

上記、投資信託とヘッジファンドの投資手法の違いをわかりやすくまとめているイメージはこちらです。


参照:「Money Square(マネースクエア)

ロング・ショート戦略は株式だけでなく債券・為替・コモディティまで、幅広い金融商品を対象としますが、とくにショートポジションが的中した時の収益は莫大です。

1992年のポンド暴落でジョージ・ソロス氏が手にした利益は2000億円にも達しますが、これらはすべてショートポジションによるものです。

リーマンショックに先立つサブプライム問題でジョン・ポールソンが600%という途方もないリターンを獲得したのも、クレジットデフォルトスワップと呼ばれる一種のショートポジションの取引です。

この他にもヘッジファンドは、アービトラージ(裁定取引)・マネージドフューチャーズ(相場上昇・下落のトレンドに乗る先物取引)・イベントドリブン・マーケットニュートラル(相場変動に影響を受けず元本を守る)などの戦略に基づき、10倍前後のレバレッジをかけつつ、先物・オプション・スワップなどのデリバティブを駆使して絶対収益をめざします。

投資家の募集方法の違い

実はヘッジファンドも、広義には投資信託の仲間であることに違いはありません。一般的な投資信託との違いは募集方法にあります。

投資信託は募集方法により、不特定かつ多数(50名以上)からの投資を募集する「公募投資信託」と、50人未満の個人投資家または機関投資家のみを対象とする「私募投資信託」とに分類されます。

そして、ヘッジファンドは私募投資信託の1類型です。

公募投資信託は、それこそ証券会社のアプリからワンクリックで買付・売付が可能です。購入金額も安い銘柄なら1万円前後です。

一方でヘッジファンドの場合、公募投資信託と大きく違い、アクセスは簡単ではありません。

わかりやすくまとめてあるイメージはこちらになります。


参照:「キャリタス就活

日本からの場合は、証券会社・銀行のラップ口座、外資系金融機関が扱うプライベートバンクの投資一任運用サービス(千万円単位は必要)、ファンドオブファンドと呼ばれる投資顧問会社を通じての取引が一般的です。

募集方法の違いに伴い、金融証券取引法上の規制も投資信託とヘッジファンドでは大きく異なります。

公募投資信託は、個人投資家保護のためデリバティブ取引やレバレッジに関しても厳しく制約されます。

また運用説明書に記載された運用方針やポートフォリオの逸脱もゆるされません。

一方で私募投資信託の一種であるヘッジファンドは、金融商品取引法による規制もかなり緩く、投資手法の制約を受けません。

運用方針やポートフォリオの開示義務もありません。

ヘッジファンドは投資信託と違って「仕掛けて出し抜く」投資手法を得意技としているので、自分たちの手の内を見せたくないのです。

手数料やコストの違い

投資信託の場合、購入時に3%前後の手数料がかかります。

それだけではなく、運用残高に対して1.5%の信託報酬も徴収されます。

ヘッジファンドの場合も、年間の管理手数料は運用残高の2%と投資信託と大きな違いはありません。

この上にヘッジファンドは、稼いだ収益に対して20%の成功報酬を徴収します。(ちなみに成功報酬20%はよく使われる設定で、広告会社がテレビ媒体に支払う宣伝費から中抜きする手数料も20%、過払い金請求で弁護士法人が受け取る報酬も20%が相場)

ヘッジファンドの手数料は決してお得ではないですが、実はこの成功報酬が強いインセンティブとなって働くのです。

ここまでヘッジファンドと投資信託の違いについて見てきました。

ここでもう一度違いについておさらいしていきましょう。

項目ヘッジファンド投資信託
収益目標絶対収益相対収益
投資手法ロング・ショートロングのみ
募集方法私募形式公募形式
手数料2%~5%20%~

ヘッジファンドと投資信託の違いを踏まえて

リーマンショックと東日本大震災で株価が大きく落ち込んでいた頃は、金融当局もヘッジファンドへの空売り規制に躍起になっていました。

新聞もヘッジファンドを悪役として祀り上げ、その動向が紙面に取り上げられていたものです。

そんな時代がウソのように、最近はヘッジファンドの話を耳にしません。最近は店じまいしたファンドも多いとか、何故でしょうか。

相場が安定的に上昇しているときは、ヘッジファンドの収益は相対的に低迷します。

例えば2017年1-9月の期間で日経平均株価は6.4%伸長しましたが、ヘッジファンドの収益は4.4%にとどまりました。

つまりこんな時期は、ヘッジファンドに頼って高い手数料を払わなくても、普通に投資していれば稼ぐことができるわけです

経済危機時資産を守るヘッジファンド

反面で相場低迷時、特に経済危機時にヘッジファンドはその威力を発揮します。

ITバブルで日経平均が2割近く下落した2002年にも、ヘッジファンドは7.32%の収益を確保しています。

日経平均が3割以上値を下げたリーマンショック時には、さすがにマイナスに落ち込みましたが、それでも△9.76%に抑えています。

つまりヘッジファンドは、相場が安定的に好調の時はやや期待外れの収益にとどまる一方で、大きな経済危機時にも安定して収益を稼ぎ出し運用資産の毀損を回避できるのです。

ヘッジファンド自身も、収益を上げないと2割の成功報酬が入ってきません。

加えて自己資金でポジションを張っていることも多いので、あらゆる投資手法を駆使して収益を稼ぎだそうとします。

投資信託の場合、経済危機時には運用資産の毀損が避けられません。

そしてこの経済危機、いつ訪れるかは誰にもわかりません。

最近は上場企業の退職年金資産も、ヘッジファンドへの運用割合を上げています。

「経済危機で退職金が払えません」とはいかないので、そのために備えているわけです。

私たちも、大切な資産を経済危機から守るためには、ヘッジファンドによる運用も選択肢の1つと考えるべきではないでしょうか。

ベンチマークを超えられない投資信託って何?

もう一方の投資信託に関しては、「ベンチマークを上回る運用成績」という前提条件に落とし穴があります。

金融庁も最近は投資信託のパフォーマンスの低さを問題視、「投資信託(アクティブ型)の7割で運用成績がベンチマークである日経平均の伸長率を下回り、3割は運用成績がマイナスに陥っている」とレポートしています。

つまり、投資信託は「ベンチマークを上回る運用成績」という約束を果たせてないのです。

もちろん果たせなくても、運用会社に入ってくる手数料が減るわけではありません。ここに投資信託最大の問題点が潜んでいるのです。

こうした両者の違いを踏まえると、投資信託とヘッジファンドどちらを選ぶかは、おのずと答えが出てくるのではないでしょうか。

確かに最低必要資金の高さを考えるとハードルは高いですが、一考の余地はあると思います。

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