ショートポジションはファンドのお家芸

ショートポジションはファンドのお家芸

この記事では、ヘッジファンドが巨額のリターンを得るためによく使う「空売り」についてまとめています。

ショート・ポジションと呼ばれる「空売り」に対しては「個人投資家が手を出したら大やけどする」、そんなイメージをお持ちの方が多いかと思います。

市場の安定機能として社会的意義が大きいのも確かですが、市場参加者や規制当局さらにはメディアからも悪者扱いされることが少なくありません。

こうした先入観はあながちウソではありませんが、かなりの誤解も含まれています。

そこで今回、そもそもヘッジファンド・空売りとは何かを解説するとともにその実態について検証します。

そもそもヘッジファンドとは

そもそもヘッジファンドとは

そもそもヘッジ(hedge)とは、「垣根・生け垣・柵」といった意味であり、そこから投資の世界では「損失回避策」との意味合いで使われるようになりました。つまりヘッジは、リターン極大化ではなく、むしろ安定的なリターン確保を基本思想としているのです。

強みを発揮するのは経済危機の時

今や運用資産総額3兆円を誇るヘッジファンドですが、ここ数年はそれほど勢いを感じません。

2016年-2018年において、株式相場(米国S&Pトータルリターン指数)は43%上昇しました。年平均で14%前後のリターンです。

多少の浮き沈みはあったとはいえ、この3年間株式市場はおおむね順調に推移してきたのです。

一方で、ヘッジファンドのパフォーマンスは15%にとどまっています。年平均5%はそれほど悪い数字ではありませんが、明らかに市場全体のパフォーマンスを下回っています。

相場が順調な上昇基調にあるときは、トレンドに乗って投資すれば良いわけですから、ヘッジファンドの出番はあまりありません。逆に真価を発揮するのが、相場が大きく乱高下する場面です。

真骨頂は「絶対収益」

ヘッジファンドは、相場の下落局面でもリターンを叩き出す「絶対収益」が真骨頂。

例えば、2008年のリーマンショック時には市場は40%急落しました。さすがのヘッジファンドも損失を出しましたが、下落は20%にとどまっています。

こうした絶対収益は、毎年の安定したリターンを求める機関投資家に人気があり、たとえば従業員の退職金を運用する企業年金ではここ数年ポートフォリオへのヘッジファンド組み入れ比率を高めています。

しかしここのところ調子のよかった経済も、ついに下落局面を迎えたようです。

米中貿易摩擦やイギリスのEU離脱さらにはアメリカの財政赤字問題など不安定要因をいくつも抱え、歴史的に低かったボラティリティーも高まっています。だからこそ、波乱に強いヘッジファンドの出番かもしれません。

絶対収益を支えるファンド4つの特徴

絶対収益を支えるファンド4つの特徴

そして、ヘッジファンドの絶対収益を支えるのがここで紹介する「4つの特徴」です。

絶対収益を支える4つの特徴

・レバレッジ
・デリバティブ
・成功報酬制
・パートナーシップ制

順に見ていきましょう。
 

レバレッジ

例えば100万円の資金を株式に投資して、10%値上がりしたら10万円のリターン。

では仮に100万円の資金で株式1000万円に投資できるとしたら、リターンは1000万円×10%=100万円となりますね。

100万円の資金で100万円稼いだから、利益率は100%に達します。

これがレバレッジです。この場合のレバレッジ比率は、1000万円÷100万円=10倍。

レバレッジ比率を上げれば挙げるほど、うまくはまった時の利益は膨らみます。

逆に言えば、10%値下がりしたら1000万円×▲10%=▲100万円の損失で、資金100万円が消えうせます。

10%以上下がったら、借金を背負うことになります。

つまりレバレッジは儲けも10倍、損失も10倍の「諸刃の剣」なのです。

ちなみに公募投資信託の場合レバレッジの利用が厳しく制限されますが、ヘッジファンドの場合はそうした縛りがありません。

デリバティブ

デリバティブ(金融派生商品)とは、株式など現物投資の損失リスクをヘッジするためのさまざまな投資手法。

ショートポジション(空売り)はその代表格でスワップ・オプション・先物取引を組み合わせます。

本来はリスクヘッジが目的のデリバティブですが、現物のポジションを超えて大きくポジションを張れば、投機的な取引も可能です。

そのため、公募投信に関しては通常現物の持ち高以内にポジションが制限されます。

成功報酬制

公募投信の報酬体系は、購入時手数料と毎年の信託報酬の2本柱です。

どれだけのパフォーマンスを叩き出したかと報酬は連動しません。

一方でヘッジファンドの場合、管理手数料は徴収するものの、報酬の柱は成功報酬、通常はリターンの2割とされています。

この成功報酬があるからこそ、ヘッジファンドはあくなきリターンを求め続けるのです。

パートナーシップ制

成功報酬制に加えて、多くのファンドはパートナーシップ制という出資形態を採っています。

つまりリミテッドパートナーとして出資者を募りつつ、ファンドマネージャー自らもゼネラルパートナーとして出資します。

「自ら出資する」のは、ゼネラルパートナーとして運用方針に強い主導権を握るためですが、それと引き換えにファンドマネージャー自身も運用が失敗すれば懐が痛むのです。

そもそも空売りとは何か

そもそも空売りとは何か

今ではデリバティブを駆使するヘッジファンドですが、原点は「空売り」にあります。

ヘッジファンドの「ビッグダディ」ことアルフレッド・ジョーンズが、友人4人からかき集めた6万ドルに自己資金6万ドルをつぎ込んで投資を始めたのが1949年です。

ジャーナリストをはじめ、さまざまな事業に失敗した末の決断でした。

それから20年、彼は5000%ものリターンを稼ぎ出します。当時ウォール街では「投資家が敬遠するあまり知られていない手法」に過ぎなかった「空売り」の活用が、ジョーンズに神の福音をもたらしたのです。

買ってないものを売るから空売り

投資の世界は、銘柄が安いうちに買って、高くなったら売る現物取引が基本。

一方で株式市場では、信用取引が認められています。

信用取引では、顧客が証券会社に委託保証金(通常は取引金額の1/3)を担保に納め、資金又は株を借りて売買します。

借りた資金や株は、一定の期日内(通常は6か月以内)に返済しなければなりません

空売りとは、信用売り取引の通称です。空売りは、現物を持っていなくても売りを建てられることから、その名がつけられました。

空売りは市場を安定させる

多くの投資家は「株価は常に上がり続けてほしい」と思っていますし、投資をしないビジネスマンにとっても、経済のバロメーターである株価上昇は大歓迎です。

つまり株価下落は「悪」であり、空売りは相場の急落をもたらす存在として悪者扱いされがち。

そんな空売りですが、実は市場を安定させる役割を担っています。

例えば、ある銘柄がストップ安になるほど値を下げてる場面で、空売り残高が増えれば、借株を戻すための買いが入り株価の反転圧力を強めます。

つまり空売りは、(度が過ぎなければという条件付きで)現物市場に流動性をもたらし、ボラティリティを低減させているのです。

個人でもワンクリックで取引ができるものの…

個人でもワンクリックで取引ができるものの…

空売りは、何もファンドや機関投資家だけの専売特許ではありません。

個人でも証券会社に信用取引口座を開設すれば、空売り取引へ参加できます。

信用取引は現物取引よりリスクが格段に大きいので、口座開設にあたり、証券会社はいくつかの条件を定めています。

ここでは、一般的な条件を紹介します。

・委託証拠金の差し入れ(一般的には30万円以上)
・勤務先(金融機関などにお勤めの場合は、審査が通らないこともあります)
・その他、一定の金融資産・投資経験・余裕資産による取引

 

過熱している銘柄のピーク見極めは難しい

空売りは個人でも始められるとはいえ、現物投資よりリスクも大きく、かつより緻密な投資判断が求められます。

ではなぜ難しいのでしょうか?

空売りは「高く買ったものを安く売って」儲ける取引で、現物取引とは順序が逆になります。

そして、空売りで重要な投資判断は「何が今後値が下がるか」と「いつ値が下がるか」の2つです。

ファンダメンタルズ面で割高な銘柄、つまり「今後下落するであろう」銘柄の探索、これは個人投資家でも比較的とっつきやすいテーマです。

難しいのは「いつ下がるか」です。

割高に見えて下がりそうな株に空売りをかける、そこからじりじりと上がりだす、そうしたことは良くある話ですね。

そして上げは割とゆっくり来るのに引き替え、下げは急激に来ます。

「踏み上げ」の恐怖

空売りは、一定の期限(一般的な制度信用なら6か月以内)に決済しなければなりません。つまりその期間内に下落しなければジ・エンドです。

その上、空売りにはコストがかかります。

まず証券会社から借りた株の金利(年利1%以上)を貸株料として支払います。

恐ろしいのが品貸料(逆日歩)で、信用売残が買残を上回ると発生し、年利10%に達することも珍しくないのです。

さらに空売りは、決済期日までに株を買い戻し(踏み)を入れなければなりません。

株価の上昇局面で、慌てた売り方の踏みが一斉に入るとさらに株価上昇を加速します。いわゆる「踏み上げ」で、踏み上げを乗り切れないと空売りは大きな損失が出てしまいます。

空売りで世界の歴史を変えてしまったファンド

空売りで世界の歴史を変えてしまったファンド

投資のプロでも見極めが難しい空売りのタイミングですが、その分野で天才的な力を誇示した男がいます。

ジョージ・ソロスのパートナーとしても有名なスタン・ドラッケンミラーはテクニカル分析に長け、空売りの絶妙なタイミングをチャートの動きをヒントにつかんだのです。

スタン・ドラッケンミラー<
参照:bloomberg

ソロスとドラッケンミラーは何度も衝突を繰り返しますが、そのたびにドラッケンミラーは引き留められました。この引き留めが、ソロスの「クオンタムファンド」に福音をもたらします。ポンドの空売りです。

1980年代までは、民間の投資プレーヤーが、(政府の財政当局が後ろ盾である)中央銀行を打ち負かすなど、誰も考えたことがありませんでした。その常識を覆したのがクオンタムファンド、遂にイングランド銀行はポンド売りに白旗を上げました。

クオンタムファンドが手にした利益は15億ドルとも言われます。

サブプライムで1.2兆円稼いだジョン・ポールソン

2008年リーマンショックを引き起こしたサブ・プライムローンの危機は、すでに2006年ごろには兆候を示していました。

住宅価格高騰が続く中、カリフォルニアでは怪しげな住宅ローン会社が、普通なら審査が絶対に下りない輩にも貸しまくっていたのです。

ヘイマンキャピタルやフロントポイントといった小ファンドも、この機を逃さずサブプライムローンを組み込んだ債券に空売りを仕掛けます。

しかし、このサブプライムで巨額の利益を稼いだのは、ジョン・ポールソンという控えめな人物。

ジョン・ポールソン
参照:THE WALL STREET JOURNAL

ポールソンは、景気が悪い時に買い、良い時に売る「逆張り」を得意としていました。

合併話が持ち上がって多くの投資家が買い急ぐ中で、ただ一人合併の失敗に賭け空売りを仕掛ける、そんな男です。

2006年当時、ポールソンは経済が下降局面に入ると読み、最初の綻びは最も脆弱な部分に現れると予測しました。

目を付けたのが、低所得層が身の丈に合わない住宅や車を買うために使っていたローンとそれを組み込んだクレジットデフォルトスワップ(CDS)と呼ばれる金融商品。

ポールソンは、CDS72億ドルを空売りします。その後、サブプライムローンは破綻し住宅価格は崩壊、一方で彼が手にしたリターンは150億ドル、収益率は700%に達しました。

日本にもいた「昭和の空売りファンド」

空売りは「欧米ヘッジファンド」のお家芸というわけではなく、日本でも「相場師」たちは空売りを投機の道具として使ってきました。

最後の相場師、是川銀蔵が亡くなってもう15年以上が経ちます。

是川銀蔵

昭和57年には長者番付1位(昔は年収が国によって公表されていた)にもなった人物で、同和鉱業や住友金属鉱山株など数々の仕手戦で名を馳せました。

とくにその名を世に轟かせたのが仕手集団・誠備グループとのバトルで、買い占めを続ける誠備に「空売り」で敢然と立ち向かい、最後は60億円を手にしたと言われています。

今では信じられませんが、昭和の時代は相場師・仕手筋と呼ばれる投機家たちが相場を荒らしまくっていたのです。

投資初心者なら日本のヘッジファンドがおすすめ

投資初心者なら日本のヘッジファンドがオススメ

高いリターンが期待できそうなヘッジファンド、しかし欧米の名門ファンドは、最低でも5億円以上の運用資産が必要です。

1000万そこそこの小金持ちなど相手にしません。

それに向こうは契約社会ですから、相手と渡り合える英語力も必要です。

これらの条件をみたせるのなら、名門ファンドも悪くありません。

日本語が使え国内で1千万円から申し込める

最近は、日本国内のヘッジファンドも実績を上げつつあります。何よりうれしいのは、間口の広さです。

つまり、5億円はさすがに手が届かないが1000万円前後を運用したい、本業が忙しいのであまり投資には時間をかけられない、英語は正直苦手、そんな方におすすめなのが国内ヘッジファンド勢です。

当サイトには、国内のヘッジファンドをわかりやすくランキング化した記事もありますので是非チェックしてみてくださいね。