トップ3ヘッジファンドの豪傑投資手法

トップ3ヘッジファンドの豪傑投資手法

ヘッジファンドの資産運用総額は今や3兆ドルを超え、過去最高記録を更新中です。

最近は企業買収・事業売却などをねらったイベントドリブン戦略によるディールが増えており、ボラティリティ戦略(市場の不安定性を利用したデリバティブ)やトラディショナルなロング・ショート戦略(空売りと現物買いのミックス)も堅調です。

こうした手法の発祥はすべてアメリカで、資産総額の実に2/3もアメリカで運用されているのです。今回の記事ではそんなアメリカのヘッジファンドのトップ3について、その度肝を抜く投資手法とともに紹介します。

苦戦の中でも儲けるシタデル

苦戦の中でも儲けるシタデル
公式サイト:citadel.com

ニューヨークのセントラルパーク2ブロック南、ミッドタウンを東西に貫く「57th street」通称ビリオネアズ・ロウ(億万長者通り)、沿道に建設されるマンションが絶えず最高価格を更新することから、この名がつけられました。

そんな超高級マンションの1つ「220セントラル・パーク・サウス」のペントハウスがまたもや記録を更新、2.38億ドルで売却されました。最上階を含む2200㎡もの広々としたフロアを買い取ったのは、ヘッジファンド・シタデルの若き総帥ケネス・グリフィンです。

30年で10万倍の運用総資産

グリフィンがトレーディングを始めたのはハーバード在学中の1989年、フォーブスを呼んで投資に興味を持った彼は親戚・知人から26万ドルをかき集め、学生寮の部屋をトレーディングルームにしてヘッジファンドを立ち上げました。

最初はオプション取引から始め、アービトラージ、転換社債と取引を拡げ、同時に運用総額を増やしプラットフォームとしての効率を追求します。決定的なのはHFT(高速回転売買)の成功、これでシタデルはトップクラスのヘッジファンドにのし上がりました。

現在シタデルの運用総資産は300億ドル超、30年で10万倍に膨れ上がった計算です。

シタデルのマクロ戦略とは

2018年のマーケットではどこのヘッジファンドも苦しんだようで、平均的なパフォーマンスはマイナス6%でした。そんな中でシタデルの旗艦ファンド「ウエリントン」は、9.1%の数字を叩き出しました。

なぜシタデルが突出して利益を稼いだのか、それは特定の投資手法の固執せずさまざまな打ち手を繰り出す「グローバルマルチ戦略」にあるとされています。

シタデルは株・債券・金利・通貨など幅広い金融商品に投資、ボラティリティ・アービトラージ・イベントドリブンなどの手法を駆使、不安定な2018年相場の中でも稼いだわけです。

社交性の無さが業界でも有名なグリフィンですが、その投資センスには定評があります。FRBのバーナンキ議長が退任後にシタデルのアドバイザーに就いたのも、最先端の投資手法とパフォーマンスに惹かれたからとされています。

「私は緊張が欲しい、緊張は変化をもたらす」がグリフィンのモットー、だからこそここまでファンドを成長させたのでしょうが、彼に仕えるのは、結構骨が折れるようです。

国家をも敵に回すエリオットマネジメント

国家をも敵に回すエリオットマネジメント
公式サイト:elliot.com

ニューヨーク生まれのユダヤ人、ポール・ジンガー氏が率いるヘッジファンド「エリオット・マネジメント」は、ホールドアウト債権者として名を馳せてきました。

ホールドアウト債権者とは、格付けの低い、投機的とされるBB以下のジャンク債を二束三文で買い叩き、訴訟に訴えてでも満額をむしり取るハイエナファンドです。そしてむしり取る相手は、企業ではなく「国家」です。エリオット・マネジメントが一躍その名をとどろかせたのも、財政破綻国家との暗闘です。

2001年12月、アルゼンチン政府は債務の返済を全面的に停止、デフォルト(返済不履行)
は1300億ドルに達しました。

エリオットは、デフォルトされた6億ドル以上のアルゼンチン国債を、3割の価格で買い漁ったとされています。
一方アルゼンチン政府は、債権者に対し7割の債務カットを要求、9割以上の債権者が受け入れます。ところが交渉を拒否(ホールドアウト)、米国で訴訟に持ち込んだり人工衛星を差し押さえたりとあの手この手を繰り出し、全額弁済(利子・ペナルティ込みで)を求め続けます。

最後は米最高裁判決によりアルゼンチンはドル決済停止に追い込まれ、エリオットに全面降伏します。一般的に国家の踏み倒しには泣き寝入りが常識ですが、決済通貨ドルを握るアメリカ政府がバックのエリオットには敵わなかったのです。このディールでエリオットが手にしたのは22.8億ドル、収益率は12倍に達しました。

ペルー・コンゴ・ギリシャなども、エリオットの餌食となった国々です。

窮地に立たされたサムスン創業者一族

近年エリオットは、アクティビスト・ファンドとしてその地歩を固めつつあります。最も話題を振りまいているのは、売上2400億ドルを誇る韓国最大の財閥・サムスングループとのバトルです。

エリオットは2016年ごろから、サムスンに対して合理化やテレビ・半導体・スマホ(ギャラクシー)といった事業の2社分割、さらには約3兆円に及ぶ配当を要求してきました。

最終的にエリオットは委任状争奪戦で敗れますが、2018年5月に米韓自由貿易協定(FTA)のISDS条項を盾に韓国政府に700億円の賠償を請求します。サムスングループ内の事業再編(子会社同士の合併)によりエリオットが損害を受けた、というのがエリオットの訴えです。

韓国財閥の資本関係は複雑かつ不透明で、そこを格好の標的にされたのです。最近エリオットの矛先は、同じく韓国屈指の財閥グループ現代(ヒョンテ)グループにも向けられ、同グループの再編計画に対し執拗に反対、1.2兆円の株主還元と3名の社外取締役就任も求めています。

アクティビストファンドVSアルプス電気

そんなエリオットは、日本企業にも食指を伸ばしています。プライベートエクイティファンドのKKRが主導する日立国際電機のMBOでは、KKRによるTOBに反対を続け、親会社の日立製作所を苦しめます。

アルパインとアルプス電気の経営統合を巡っては、エリオットの巧みな立ち回りが話題となりました。両社の統合に関しては香港に拠点を置くアクティビスト・オアシスグループが強硬に反対、そんな中でエリオットは両社の株を買い増します。エリオットとオアシスが手を結ぶのを恐れた経営陣は、統合に伴う特別配当と自社株買いを自ら提案しました。

そうはいっても、エリオットの日本における活動は、大成功というわけではなさそうです。ただし今後の動向には目が離せません。

プライベート・ファンド産みの親ブラックストーン

プライベート・ファンド産みの親ブラックストーン
公式サイト:BlackStone.com

2018年10月、米ブラックストーングループは、運用総資産が4567億ドルに達したと公表しました。

同グループはKKR ( コールバーグ・クラビス・ロバーツ)やカーライルと並ぶ3大プライベートエクイティ(PE)ファンドとして有名で、最近はPEだけではなく不動産やヘッジファンドなど運用先を多様化させたオルタナティブファンドに進化しています。

ブラックストーンを率いるのは創業者でもスティーブ・シュワルツマン、彼の年収は8億ドルに達します。格差の象徴として批判の的にさらされる投資銀行のCEOたち(ゴールドマンサックスで2400万ドル)を1桁上回ります。

そんなシュワルツマンがピーター・ピーターソンと共にリーマン・ブラザースを飛び出しブラックストーンを設立したのが1985年です。当初はリーマン時代の顧客たちに数百通にわたるレターを送り、時には飛び込み営業までかけたとか。ただし、その殆どは無駄足に終わったようです。

今をときめくブラックストーンにも、こんな地を這うような時代があったことには驚きです。

企業を丸ごと買収するバイアウト戦略

プライベートファンドは非上場企業を買収、経営に関与して企業価値を高め、上場などを通じて高いリターンを得るファンドです。スタートアップ企業を育てて成長を支援するベンチャーキャピタルの他、不振企業を買収して経営を立て直すターン・アラウンドなど様々な手法を採ります。

ヒルトンホテルの買収で大儲け

ブラックストーンがその名を轟かせたのは、メガホテルチェーン・ヒルトングループ(ヒルトンをはじめコンラッド・ダブルツリーなど複数のブランドを擁し4000ものホテルを経営)の買収です。

ブラックストーンはヒルトンを非上場化、経営効率を上げるためまずオペレーションに手を付けます。粗利の薄いミニバーやルームサービスは廃止、レストランも朝食以外の場所は閉めてしまいます。その代わりに、おしゃれな売店を営業するといった具合です。

同時に、フランチャイズや運営委託などの手法でホテル網拡大を拡大し、投資リスクを取らずに確実に業績を上げていきました。

ヒルトンが再上場を果たした後、2018年にブラックストーンは全株式を売却、140億ドルもの利益を手にします。

荒っぽく稼いでいるのか思えば、実際は手堅い事業展開や現場の業務見直しで着実に企業価値を上げていく、そこにブラックストーンのすごみがあるのかもしれません。

そもそもヘッジファンドとはいつどこで生まれたか

そもそもヘッジファンドとはいつどこで生まれたか

ヘッジファンドを編み出したのはAWジョーンズ、第2次世界大戦直後のニューヨークが舞台です。ジョーンズはウォール街では全く無名の人物で、しかもファンドを立ち上げた時には既に48歳でした。

そんなジョーンズが駆使したのがショートポジションを駆使して、相場の下降局面でも利益を上げる「絶対収益性」の手法です。今では当たり前のロング・ショートポジションですが、「投資=買い」が当たり前だった当時としては画期的なアイデアだったのです。

魔法の杖はレバレッジ

ジョーンズがよりリターン率を高めるために使った魔法の杖が、レバレッジです。例えば10倍のレバレッジをかければ、100万円の元手を1000万円で運用できます。当然リターンも10倍ですが、損失も10倍です。

自らの運用方針に自信のあったジョーンズは、これを50倍にまで引き上げます。文字通りレバレッジをテコにロング・ショートポジションを駆使したジョーンズは、当初10万ドルの運用資産を数百倍まで増殖させました。

ヘッジファンドと普通の投資信託との違い

ジョーンズは成果報酬制(リターンの2割を手数料とする)や運用者パートナーシップ制(自分の資産もファンドに出資しリスクを取る)も導入しました。

ジョーンズが作り上げた絶対収益性・レバレッジ・成果報酬制・運用者出資制の4つは今でもヘッジファンドに受け継がれており、一般的な投資信託との差別化が図られているのです。

アメリカのヘッジファンドは敷居が高い

アメリカのヘッジファンドは敷居が高い

相場の下降局面でもリターンが期待できるヘッジファンドは、富裕層や年金基金といった機関投資家からの人気を集めています。特に年金基金のヘッジファンドに対する関心は高く、今では5%を超える運用資産をヘッジファンドに委託しています。

ただし、私たち庶民にとってアメリカのヘッジファンドは敷居が高く、2000万円、3000万円といった出資額では全く相手にされません。一般的には、最低でも5億円の資金が必要とされています。

名門ヘッジファンドはお腹一杯

それに運用資産が大きくなりすぎても動きが取り辛くなるので、名門ヘッジファンドの多くは新規募集を停止しています。もうすでに彼らは「お腹一杯」なのです。

IFA(エージェント)を全面的に頼りにはできない

不動産もそうですが、勝手のわからない海外で運用するならIFA(独立投資アドバイザー)といったエージェントを通すのが一般的です。ただしエージェントはヘッジファンドとも提携しているので、全面的に投資家の味方というわけではありません。

それに、アメリカは契約社会です。後で泣きを見ないためには、分厚い英文契約書に目を通す、現地のファンドマネージャーと交渉する(もちろん英語で)といった行動が求められます。

エントリーしやすい日本のヘッジファンド

エントリーしやすい日本のヘッジファンド

あまり知られてはいませんが、最近では日本国内でもヘッジファンドが育ちつつあります。欧米系ファンドとの大きな違いは最低投資額で、一般的には1000万円より受け付けています。

日本語が使え国内で申し込める安心感

もう1つのメリットは、国内で申し込める安心感です。もちろん英語でのコミュニケーションは不要です。つまり、

・金融資産5億円を超えるような超富裕層ではないが
・1000万円以上の資金を自由にできる
・海外経験のない普通の日本人
には最適の選択肢といえます

日本のヘッジファンド3選紹介

最後に、国内勢の中から最近元気な3つのファンドを紹介します。

BMキャピタル

BMキャピタル

ファウンダーは東京大学を卒業後、大手外資系投資銀行で経験を積んだのちにBMキャピタルを立ち上げました。大手証券・銀行系のヘッジファンドは何かとしがらみに縛られがちですが、BMキャピタルは独立系ヘッジファンドとして機動的な運用を展開し10%以上のリターンを実現しています。

何より好感が持てるのは、投資初心者を大切にしている点です。「運用レポート発行や企業分析情報を活用したコミュニケーションを通じ出資者の成長をサポートしたい」、そのポリシーには誰もが賛同します。

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アズカルアセットマネジメント

アズカルアセットマネジメント

野村アセットマネジメントでグローバル運用に携わっていた、稲葉真行氏が率いるアズカルアセットマネジメントは2005年の創立です。国内株式に米債券・新興国投資・アービトラージ等をバランスよく組み合わせ、安定した収益を実現しています。

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ヘッジファンド証券

ヘッジファンド証券

ヘッジファンドに投資するいわゆるファンド・オブ・ファンズで、日興証券出身の長田雄次氏が率いるエピックグループが立ち上げました。100万円前後の小口から受け付けている、1か月ごとの換金(一般的なヘッジファンドは3か月以上)ができるなど、資金面での融通が利く点が最大の魅力です。WEBでの換金も可能です。

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